ラストパス
練習メニューを一通り終え、グラウンドの真ん中あたりに立っている子供に向かって、ボールを蹴る。
転がってきたボールをみながら、「どうするの?」ってな顔をしているけど、僕がタッチライン沿いをゴールに向かって走り始めたら、解ったようだ。
トラップせず、僕の行き先に向かってパスを返してくる。
「あれ、忘れちゃったのかな?」って顔をして、もう一度こどもがいたところにパスを返すと、
「あ、そうだった!」ってな顔をして、ゴール前まで移動している僕にパスをしてから、走り出す。
僕は、受けたボールをドリブルで外へ持ちだし、もういちど、ゴールから離れた場所へボールを蹴ると、
こどもは既にそこへ向かっていた。
パスをうけたこどもは、ゴール方向へ向き直し、ゴールに向かって走り込んでいる僕にパスをして、ゴールへ向かう。
僕が、誰もいないゴール前へボールを蹴り入れると、そこにはこどもが走り込んできている。
シュート!
無人のゴールを相手に僕とこどもの二人だけ。
いつ、どこからでもシュートできるはずなのに、僕とこどもの頭の中には、ゴールキーパーも対戦相手も審判さえもいる。
ただ無言でパスとドリブルを繰り返していても、ラストパスは分り合えている。
僕も、このときが一番楽しいな。
指導者と選手でも、親と子でもなく、サッカーする仲間になっているからね。
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