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2006年09月15日

親身

「握力が無いので、デッドリフトが上手くできないのですが...」と傍らでトレーニングしていた高校生の男の子に話しかけられた。

実は、僕も右手首の骨にひびが入っていたり、右手の神経を痛めていたりで、フリーウエイトを長い時間持っていることができない。握力は、左右同じぐらいなんだけど、右手だけ持久力が無いんだ。

「だったら、ダンベルでやったら?」と、僕の経験からこんな返事をしておいた。

「だけど、トレーナーにもちゃんと聞いたほうがイイよ、怪我をしないようにね」とアドバイスをしたら、その子は素直にトレーナーの元へ行き、トレーナーとともに戻ってきた。

「ダンベルよりもバーベルのほうがイイですよ」とあっさり応えるトレーナー。

「バーベルのほうがバランスをとりやすいし、将来ウエイトを重くする時も、ウエイトが足りなくなる事がないから」というのがその理由だそうだ。なるほど、教科書通りの答えだね。

僕がバーベルよりダンベルを薦めるのには理由がある。僕のように、左右の筋力差、握力の差なんかがある場合、バーベルだと左右を均等にグリップする事ができない。

左手はまだ元気にグリップできていても、右手が先に音を上げてしまうから、バーベルのバランスが崩れ、フォームまで崩れてしまう。

これがダンベルだと、右手の握りを少し緩め、指先で辛うじてぶら下げているような状態になったとしても、左右に同じウエイトが均等に掛っているので、バランスを崩す事はない。

万が一、我慢できなくなって右手を開いてしまったとしても、右側のダンベルが床に落ちるだけで済む。

これが、バーベルだったとしたら、考えるだけでも怖い。大怪我になる。それに、ダンベルで練習しておけば、左右に同じ重さの物さえ持つ事ができれば、どこでも身近なものでトレーニングできる。トレーニングになんて滅多に来られない人には、こっちのほうが向いていると思う。

その子は傾いたバーベルに苦労していた。僕は腰を痛めなければいいなと思って見ているしかなかった。

また、その子はまだ高校生で、バレーボールの選手だという。身体は見るからに華奢で、これからバランスをとりながら大きくなる過程にある。

年齢や競技種目などから考えても、ダンベルで足りなくなる程のウエイトは必要ない。

トレーナーの言うとおりにバーベルでデッドリフトを始めたその子を、いなくなってしまったトレーナーの代わりに観察していたら、フォームが全くできていなかった。

「軽いウエイトでフォームをつくってからにしたら?」と言っても、「腰が痛くなりました」と言いながらも、重いウエイトに拘ってしまう。

仕方がないなと思って、その子のフォームを見ながら、怪我をしないように注意すべきポイントだけを言い続けた。

はっきり言って、これでは時間の無駄だ。明日になって、腰が痛むのを彼は「効いている」と誤解するかもしれない。

彼がデッドリフトで鍛えたかったのは、Erector SpinaeではなくGluteus Maximusだって事を、あのトレーナーは知っていたのだろうか?

そういえば、「親身」って言葉、最近聞かないなと思ったんだ。ただそれだけの事。

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