サッカーは知っている
ボールを取り返すと、相手ゴールに向かって一人で一目散にドリブルを始める。どんな状況でも、何の躊躇いも無く。
こんな状況が続くのをスペイン人のコーチは、暫くの間観察していた。
そして、日陰に小学生たちを集めて、「サッカーを知ってる?」って話を始めたんだっけ。
小学生たちを日陰で休ませている間、コーチは難しい顔をして考え込んだり、今回の中学生のクラスを担当していて育成責任者でもある、もう一人のスペイン人コーチに相談したりして、どうやら次のメニューを思案している様子だった。
想定外の事が起こっているんだろうなって、僕は思ってた。
そして、この後に行われたのは、パスの練習だった。
四角形の辺上を動きながら、コントロールとパスを繰り返す、基本的なもの。
その後は、パスをしなければいけないって縛りのあるゲーム。
「パスをしなければいけない」ってルールで縛っても、ドリブルを始めてしまう小学生たちに向かって、「パス」と声をかけるコーチ。
スペイン人コーチが選択したこの対応は、僕にはとても意外だった。
だけど、次の日からの練習は違ってた。
昨日は初日だったこともあり、なんの予備知識も無く日本の小学生のサッカーを観て、スペイン人のコーチたちは面を食らったんだろうな。
昨日の練習が終わった後で、「明日からは大丈夫」ってコーチが言っていた通りだった。
昨日パス主体の練習をしてみたのは、小学生たちのスキルを確認したかったからなのかな。
サッカーを知らない訳じゃない。
「サッカーは知っている」って、確認できたんだろうと思う。
だったら、何を知らないのだろう。
何を知れば、サッカーになるのだろうか?
こんな風に考えてくれていたんだなって僕は思った。
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